タイの公用語はタイ語です。タイ語は、日本人にはなじみのない言語です。また、タイ語の文字はアルファベットでも漢字でもないため、どう読んでいいのか分からないうえ、意味を類推することもできません。現地でタイ語しか通じないとすれば、旅行者にとっては大変です。
とはいえ、現実には、タイは旅行先外国人観光客が多数訪れている国です。実際に訪れてみたところ、日本程度には、英語が通じました。ホテルや鉄道駅・観光地では、看板類には英語表記が行き届いていますし、係員にも英語は通じます。
街中では、年配者や子供にはタイ語しか通じませんが、20歳〜30歳台の方なら、中学生程度の英語は解してくれます。特に、旅行者の多いバンコク・チェンマイでは、現地の人も外国人に慣れているため、「京都程度には英語が通じる」という印象でした。
但し、鉄道以外の市内交通では、英語はほとんど通じません。バンコクやチェンマイの市バスでは、乗車後に車掌に運賃を支払って切符を買う必要がありますが、車掌はすべて年配の女性で、英語は通じません。バンコクの市バスの場合、非冷房の車両は均一運賃なので、乗車後に車掌に黙って運賃を渡せば済みます。しかし、冷房バスの場合は距離別運賃なので、車掌に行先をタイ語で伝える必要があります。市バスの外国人対応が不十分なのも、日本と同じですね。京都では、市バスのバス停で困惑している外国人旅行者をよく見かけます。
タイには市バスの運行の無い都市も多くあります(例:ピッサヌローク・カンチャナブリ)。そういうところでは、市内交通は広義のタクシー(乗り合いタクシーやトゥクトゥク(オート三輪タクシー)を含む)が担っています。広義のタクシーは運賃が交渉制であることが多いですが、運転手に英語が通じることは少ないです。また、外国人相手に高い運賃をふっかけてくるタクシーもあります。
タイ文字は表音文字です。仕組はアルファベットやハングル文字(韓国語)と同じで、母音字と子音字を組み合わせて発音を表します。このため、母音字と子音字を覚えれば、意味は分からないまでも、文字を読めるようになるはずです。街の看板が読めるようになれば、街を歩きながら言葉を覚えられるようになるため、知っている単語が加速度的に増えて、旅行が楽になっていきます。
これは、初めて韓国旅行をしたときに経験したことです。釜山港から街に出た直後は、ハングル文字が全然読めず、ハングル文字の看板の列に圧倒されました。しかし、ハングル文字→アルファベットの対照表を片手に文字を読む試みを繰り返しているうちに、7日目くらいから、店で欲しいものの文字を読んで、それを伝えられるようになりました。売店で品物の名前を読んで、それが初めてちゃんと手渡されたときには、感動しました。
この感動を再び、とばかりに、タイ滞在の10日間は、手製のタイ文字→アルファベット変換表を手に、目に入るタイ文字をなるべく読むように試みました。
この過程でまず困ったのは、タイ語にはいろんな字体(フォント)があるということでした。中でも、アルファベットと見間違えるような字体には、惑わされました。
写真は、バンコクのファランポーン駅にあるフードコートの入口にある看板です。上の写真と下の写真には、同じ文字が書かれています。上の写真の部分の2文字目には、アルファベットのuみたいな字、一番右にはSみたいな字がありますが、これはアルファベットではなく、タイ文字です。uみたいな字は、アルファベットのnの発音をします。また、Sのような文字は、アルファベットのrの発音をします。全体では、「クーンヤィアーハーン」という発音になります。
日本で購入した、タイ語の入門書には、下のほうの字体が使われていました。このため、現地に行って、アルファベットのようなタイ文字を見たときには、何の字なのかが分かりませんでした。しかも、なまじアルファベットに似ているため、どうしてもuやSを見ると英語風の発音を連想してしまいます。uを見てnの発音、Sを見てrの発音を連想できるようになるのには時間がかかりました。
鉄道旅行者にとっての、文字を読む練習の格好の題材は、各駅の駅名標です。駅名標には、タイ文字とアルファベットが併記されています。駅に着く毎に、なるべくアルファベット部分は見ずにタイ文字を見て読み方を考え、アルファベット部分をみて答え合わせをしていました。
しかし、実際に文字の解読を試みたところ、ルールに沿わない例外的な読み方がいくらもあることが分かりました。帰国後にインターネットを閲覧したところ、やはり、タイ文字の読み方には、思った以上に例外が多いとのことでした。
参考: タイ語学習者の為のタイ語学習サイト『タイリンガル』(http://www.tlin.jp/) 結局、10日間の訓練では、タイ文字が読めるようにはなりませんでした。一部の文字を見て発音が浮かぶようにはなったものの、認識の速度が遅すぎて、「読む」と言うには程遠いレベルです。読むレベルになるまでには、もう少し訓練が必要そうです。