2011年8月12日、私は昆明北駅にやってきた。
以前は昆明北駅からは、ベトナムとの国境の町である河口までの列車が発着していたが、現在は運行されていない。昆明北駅には『雲南鉄路博物館』が併設されている。
と、そんなガイドブックの文句につられて昆明北駅に来てみたが、駅には『雲南鉄路博物館閉館通告』という張り紙。博物館は、昆明地下鉄の工事のため閉館、だそうである。
少しがっかりしたが、その横には、昆明北駅発の列車の時刻表が張ってある。それによると、石咀−昆明北−王家営で1日2往復、短距離の列車の運行が行われている。
車次\駅名 │石咀 昆明北 王家営
──────┼───────────────────
8861 │ 0725→0817
8862/3│1045←1010 1005←0915
8866 │1110→1145
8867 │1655←1620
8868/9│1716→1751 1756→1855
8870 │ 2030←1935
これらの列車運行のことは事前には知らなかったので、急いで手元にある昆明市の地図を見てみた。王家営は見つけられなかったが、石咀は昆明市の西部にあり、市バスを乗り継いで昆明市内に戻ってくることができるようである。
それならばと思い、私は昆明北16:20発の8867次列車・石咀ゆきに乗ることにした。
◎帰国後に調べたところ、王家営からも市バスを乗り継いで昆明市内に戻ることは可能なようです。
16時ちょうどに駅に行くと、ディーゼル機関車1両+荷物車1両+客車3両の編成がすでに発車を待っていた。切符は車内で購入する方式とのことである。車内はガラガラであるが、市バスで行ける場所にわざわざ、それも1日2往復しか走らない列車に乗っていこうという旅客が少ないのは無理もない。
16時20分、定刻どおりに発車した列車は、昆明市内の踏み切りをいくつも通りながら、ゆっくりと走っている。踏み切りでは、大量の車と原付が列車の通過を待っている。そんな踏み切りを通るときは、列車は警笛を連続吹鳴するので、にぎやかだ。これは、他の中国の列車では見たことのない情景である。
列車員が巡回してきたので、石咀までの乗車券を購入。運賃は1.5元(約20円)だった。
この3両編成の列車には、列車員が各車両に1人ずつ乗務している。これとは別に機関士も乗務している。さらに、すべての踏み切りには踏み切り番が配置されている。この列車の運行には、日本では考えられないほどの人手がかかっている。
途中には、標準軌との十字交差もあった。しかし、この標準軌線路が活用されているものなのか否かは分からなかった。
終点の石咀には時刻表どおりに到着した。
このあとは市バスをのりついで昆明市内に戻るつもりだったのだが、石咀駅の出口が分からない。駅の出口の外は工事現場になっている。こういう場合、日本では工事現場の脇に歩行者通路が確保されているものであるが、ここではそういうものが一切ない。
これには困ってしまい、いっそ折り返しの列車で戻ろうかとも思ったが、結局私は、折り返し列車が出た後の線路を歩いて、駅の外に出たのであった。もし市バスで石咀に来て列車で戻ろうとしていたら、石咀駅を見つけられなかったかったかもしれない。
外に出て工事看板を見たところ、この工事は昆明地下鉄の工事であることが分かった。近い将来には、この石咀にも昆明地下鉄の駅ができるのだろう。そのときには、この旅客列車の運行は廃止になるのかもしれない・・・。私は貴重な乗車経験が得られたことに満足しつつ、市バスで石咀をあとにしたのである。
◎ここに限らず、今の昆明は市内のあちこちで盛んに地下鉄工事が行われています。このため、道路は至るところで規制が行われており、渋滞もひどくなっています。現在の昆明は、市内移動のしにくい都市になっています。