電車は、メルボルンを中心として、放射状に15方向に路線を延ばしています(路線図)。
電車のターミナルといえる駅は、『フリンダースストリート "Flinders Street"』・『スペンサーストリート
"Spencer Street"』の2駅です。フリンダースストリートの方がメルボルンの中でも賑やかな地域に面しており、賑やかな雰囲気を持っています。
フリンダースストリート駅の駅舎はなかなかの名建築で、一見の価値があります。この駅舎は夜はライトアップされ、これがまた見栄えのするものです。この駅舎の入口には針時計がたくさん並んでいますが、これは実は、各路線の次の電車の発車時刻を指しています。何ともしゃれた発車案内であり、電光表示機だらけの日本の駅にはない趣を感じます。
一方のスペンサーストリート駅は、フリンダースストリートとは対照的に、機能優先の素っ気ない駅です。場所的にもメルボルンの繁華街からは若干離れています。ただし、このスペンサーストリートは長距離列車のターミナルであるため、鉄道旅行者には重要な駅です。
メルボルン都心部では、電車の路線はこの2駅を含んだ『City Loop』という環状線になっています。ただし、この環状線は1周たったの5駅という小規模なものです。電車は郊外各所を起点として、メルボルンの環状線を1周してから、フリンダースストリート・またはスペンサーストリートで終点となるのが普通です。なにしろ15方向からの電車が『City Loop』に流れ込んでくるため、『City Loop』の電車本数はかなりのものになります。このため、『City Loop』は複々線です。また、ごく一部ですが、地下鉄になっている区間もあります。
電車は3両編成を1単位とし、混雑時間帯には6両編成になります。車内は3列−2列のボックスシートを主体としており、着席重視の多座席構造になっています。
『City Loop』の駅の少なさが示すように、メルボルンは結構小さい都市であり、そこにトラムがきめ細かく走っています。このため、メルボルンではあまり観光に電車を使う用事がありません。ただし、観光SL『パフィンビリー鉄道』の走る郊外のダンデノン渓谷(ベルグレイブ)に行くのに使います。
※ 電車線が市内の『City Loop』では複々線、つまり線路4本であることは前述しましたが、『City Loop』の外側の郊外では3線、つまり『複単線』の区間を見ることができます。日本ではこのような区間は見られませんので、珍しいものです。
この複単線の使われ方は、時間帯によって変わります。3線をA線・B線・C線で説明すると、以下のようになります。
(朝ラッシュ時) A線はメルボルンゆきの急行・B線にはメルボルンゆきの各駅停車が走り、C線には郊外ゆきの各駅停車が走ります。
(データイム) A線はメルボルンゆき・B線には郊外ゆきの各駅停車が走ります。急行は走りません。また、C線は使いません。
(夕ラッシュ時) A線はメルボルンゆき各駅停車・B線には郊外ゆきの各駅停車・C線には郊外ゆきの急行が走ります。
つまり、上下の各駅停車に線路1本ずつを使い、ラッシュ時には混雑方向の急行に残り1本を使うわけです。
※ メルボルンの電車では、機械式ATSが健在です。駅のホームからでも、信号が赤か青かに従って打子(バー)が上下する様子を観察することができます。