フィンランド鉄道の列車には、以下のような種類があります。
このほか、南部と北部を結ぶ夜行列車には、カートレイン車両(Car-carrier train)が連結されています。また、モスクワ〜ヘルシンキを結ぶ国際夜行列車もあります。しかし、僕はこれらの様子は分かりませんでした。
フィンランドの鉄道の旅客列車は、比較的新しい車両で統一されています。古い車両はほとんど見かけません。また、車両のバリエーションはあまりありません。
代表的な幹線であるヘルシンキ〜ロバニエミ間の列車運行状況は、概ね以下の様になっています。
長距離を走行する、機関車牽引の客車列車です。昼行便と夜行便があります。
昼行便は、食堂車と座席車の編成です。夜行便はこれに、寝台車とカートレイン車両が連結されます。
ほとんどの車両が2階建てです。インターシティの2階建て車両の車高は、日本の2階建て車両よりもずっと高くなっています。このため不安定でよく揺れそうに見えますが、実際には2階席でも揺れるようなことは無く、快適です。
通常の座席車は、2列-2列のリクライニングシートです。背もたれを倒すことはできますが、向きは変えられないため、半数の席は後ろ向きとなります。インターシティは全て指定席ですが、その指定席が後ろ向きだと、がっかりしてしまいます。
VRのWebサイト(https://www.vr.fi/)を使ってフィンランドの鉄道の乗車券を買う場合、シートマップから好きな座席を選ぶことができます。このシートマップは、どっちが前なのかが分かりにくいですが、画面に向かって右側がヘルシンキ方向のようです。
ヘルシンキ駅で観察すると、インターシティの2階建ての座席車の場合、ヘルシンキ発列車の一番前の座席が1番です。1階席の後ろに向かって番号が増えていき、一番後ろに至った後、今度は2階席の前に向かって番号が増えていくようです。つまり、1階席と2階席とでは、番号の増える向きが逆です。
但し、たまに逆向きの席番になっている車両も見かけました。確実に進行方向の座席を押さえるのは難しいようです。
車内ではWi-Fiの利用が可能です。また、各座席に電源コンセントが用意されているため、携帯端末やパソコンの充電もできます。但し、コンセントの形状も電圧も日本とは異なるため、日本から持ち込んだ機器がすべて使えるわけではありません。電圧は200Vです。
インターシティの最高速度は200km/hと、新幹線並みです。インターシティの車内の液晶モニターでは、走行中に速度を表示しています。これを見ると、人口密度の低い平野部では200km/hを保って走行しています。
長距離を走行する電車列車です。昼行列車に使われます。走行路線は限定されておらず、ヘルシンキ発の各方面の長距離列車に使われます。座席車5両と食堂車1両の6両編成ですが、これを2本つないだ12両編成で運転されることもあります。
ペンドリーノはイタリアが発祥の振り子式高速電車です。しかし、フィンランドでは、他の列車に比べて特別速く走っているわけではありません。ダイヤを見ても、速さは客車列車のインターシティと同じくらいです。
車内設備も、インターシティと同水準です。座席の向きが変えられないのも、インターシティと同じです。
ヘルシンキ空港駅 |
ヘルシンキ周辺を走る短距離の通勤電車です。
平日昼間のヘルシンキでは5〜10分毎に走っています。ヘルシンキ空港にも乗り入れているため、多くの旅行者にとって、最初に乗車するフィンランドの列車はこれになります。
運行路線は3路線ですが、各駅停車だけでなく、通過駅のある快速列車もあります。路線や停車駅の違いは、1文字のアルファベットによる系統記号で表されます。
電車は、Flirt city trains と呼ばれるタイプです。このタイプの車両は、ヨーロッパのあちこちに導入されています。
座席は、2列-3列のボックスシートです。短距離列車ですが、トイレはあります。
電車は4両編成です。朝夕時間帯には、4両編成を2本つないだ8両編成が見られます。
コミュータートレインの車内では乗車券は売られていません。フィンランドの駅には改札口がありませんが、コミュータートレインに乗る場合は、乗車券は必ず、乗る前に駅の券売機で購入する必要があります。加えて、乗車後は、車内のバリデーター(刻印機)で、乗車券に刻印を押すことも必要です。これを怠ると不正乗車となり、見つかった場合は、高額の罰金(80ユーロ)をとられます。
コミュータートレインのうち、30km以上の中距離を走る以下運転系統の列車は、ヘルシンキ付近では多くの駅を通過する、快速運転を行います。この列車には、近距離列車とは異なる車両が使われます。
ヘルシンキ〜リーヒマキ(Riihimaki)
ヘルシンキ〜ラフティ(Lahti)
乗客の少ない地域へ直通することから、電車は2両編成です。但し、朝の時間帯は、これを4本つないだ8両編成も見られます。
車両は、新しいSM4型と古いSM2型が使われます。
新しいSM4型は、最高速度160km/hの性能を持ちます。実際に、郊外の田園地帯では160km/hを出して疾走しています。ただし、車内設備は大したことありません。近距離用車両と同じ、2-3列のボックスシートです。
古いSM2型は、最高速度が120km/hと遅い、車内の床面が高くて車いす利用に支障があり、バリアフリー対応になっていない、などの難点があります。このため、車両が大量に必要になる朝夕の通勤時間帯にしか使われていないようです。
リージョナルトレイン(Regional Train)は、ヘルシンキから離れた地方を走る各駅停車列車です。座席指定はありません。
リージョナルトレインに使われる車両は、運転区間によって、
に大別されます。
コミュータートレイン車両によるリージョナルトレインは、以下の区間で運行されています。
概ね、2時間〜4時間毎の運行です。コウボラ〜コトカ間を除けば、インターシティなどの長距離列車が走る路線です。幹線沿いに点在する小さな村への輸送を担当する性格の列車です。
レイルカーは、1両のディーゼルカーです。ワンマン運転で車掌がいないため、車掌から乗車券を購入することはできません。代わりに、車内に券売機を搭載しています。
僕が見た範囲では、以下の区間で運用されていました。
いずれも、長距離列車の走らない閑散路線です。運行本数は、カルヤー〜ハンコ間はおよそ2〜3時間毎ですが、ヨエンスー〜ピエクサマキ間と、ヨエンスー〜ヌルメス間は、1日2往復です。
また、ヨエンスー〜ピエクサマキ間などは、183kmの間に駅は5駅。駅間距離が平均36kmもあります。各駅停車列車なのですが、駅と駅の間の所要時間も25分以上あります。これはもう、ローカル列車とは言い難く、どちらといえば「利用者の極端に少ない区間の長距離列車」という性格だと思います。
ヘルシンキ〜ロシア・サンクトペテルブルグ間を運行する国際電車です。この列車は、国際旅客専用になっており、国内区間の利用は認められていません。日本人の場合は、ロシアへのビザを用意しておかないと乗れないことになります。
昼間はおよそ2時間毎と、結構頻繁にに運転されています。このため、ヘルシンキ駅を利用した場合、フィンランドを鉄道で旅行していると、何度となく目にします。日本人には乗るのが難しい列車ですが、フィンランドとロシアとの間の人の流れは結構多いようです。
車両は、7両編成の電車です。車体はペンドリーノに似ていますが、外部塗装が国内列車と異なるため、目立つ存在です。