Chapter 10: Acela Express


 30th Street Station は、近郊列車と Amtrak が発着する駅だ。ここも、駅舎はクラシックな大きい建物である。

 Acela Express (アセラエクスプレス) は、ボストン−ニューヨーク−フィラデルフィア−ワシントンを結ぶ Amtrak の列車である。同区間では最速列車に位置づけられる。
 私は Acela Express でニューヨークに戻るべく、切符売場で切符を所望した。すると、「138ドル」という耳を疑うような答えが返ってきた。フィラデルフィア〜ニューヨーク間は約 145km 、近郊列車を乗り継げば $20.5(ニューヨーク〜トレントン $12.5・トレントン〜フィラデルフィア $8) であるから、信じられないような高運賃である。そんな現金は持ち合わせていなかったのでトラベラーズチェックで支払ったが、駅員はトラベラーズチェックを手にどこかへ電話をかけたり、透かしを確認したりと、かなり入念にチェックをしていた。便利と言われるトラベラーズチェックだが、使うのに時間がかかるケースは多かった。やはりアメリカでは、クレジットカードが最も便利である。

 17時34分、Acela Express ボストンゆきが、ホームに入ってきた。両端に機関車を配した編成で、客車はファーストクラス1両・ビジネスクラス4両・カフェカー(ビュッフェ)も1両連結されている。エコノミークラスに相当するコーチクラスの車両はない。改めて自分の切符を見ると、たしかに "Business Class" と書いてある。これが運賃の高い理由らしい。

 Acela Express は予約が必要だが、座席は指定ではない。そして、座席は半分以上埋まっている。このため、途中駅乗車の場合はあまりいい席には座れない。客層はさすがビジネスクラスという感じで、ノートパソコンを開いている人が多い。
 Acela Express はボストン〜ワシントン間の最速列車という位置づけである。が、乗っていても速さはあまり感じられないし、実際にダイヤを見ても大して速くはない。ボストン〜ニューヨーク〜ワシントン間には Acela Express のほかに Regional という列車が走っているが、これと Acela Express の所要時間は大差はないのだ。座席も Acela が Regional に比べて豪華というわけでもない。そして、Regional は Coach Class 主体の編成なので、運賃はもっと安い。


 ちょっともったいなかったかな・・・という感じのする Acela Express ではあったが、それでもこの高運賃にもかかわらず、これだけのビジネス利用があり、しかもダイヤグラムのチェックができる程度の正確な運行が行われているのだから、都市間列車としてはなかなか良いものである。

 と、そんなことを思っているうちに、列車はニューヨークの ペンステーション に到着し、私は滞在地のスタンフォードに戻るべく地下鉄への乗り換え通路に向かったのである。実は私の乗った Acela Express は、ペンステーション の次はスタンフォードに停車するのだが、あの高運賃を考えると、ニューヨークで降りたのは好判断だった。


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