2. ロバニエミ→ホニングスヴォーグ

□17/08/12 Rovaniemi 11:45(Eskelisen Laspin Linjat,Nordkapp)21:35 Honningsvag


 ロバニエミ駅から10分ほど歩くと、ロバニエミのバスターミナルに着く。
 ここからはノールカップ(Nordkapp)行きの路線バスに乗ることになっている。この路線バスは、さきほど列車で通り過ぎたオウルを起点とし、ノールカップまでの915kmを13時間かけて走るという長距離バスなのである。私の乗車区間はロバニエミ→ホニングスヴォーグ(Honningsvag)までの680km、乗車時間は約11時間である。

 バスターミナルには結構立派な建物があるが、切符売り場の窓口は閉まっている。窓口業務は、土曜日は休みらしい。ロバニエミ→ホニングスヴォーグ間のバスの運賃は127.4 ユーロという高額になるので、乗車前に切符を買わなくて大丈夫なのか?と思ったが、切符はバスの乗車時にドライバーから難なく購入できた。
 フィンランドでは、長距離バスの乗車券は乗車時に運転士から購入するのが一般的である。また、クレジットカードでの支払いが可能である。実際問題、このバスでは、現金で運賃を払っている人は見かけなかった。

 11時45分、バスは座席が7割方埋まった状態で、ロバニエミを出発した。車内には、アジアからの観光客らしい人も結構乗っている。この人たちも、ノールカップを目指しているのか?とこのときは思った。
 ところが、ロバニエミを出て15分ほどでバスは「サンタクロース村」という観光地に停車し、観光客らしい乗客はここでみんな降りてしまった。

 バスは、平地をまっすぐ横切る道路を、時速100km/hくらいの速度で走り続ける。しっかりした舗装の道路なので、走りは快適である。
 車中から見る限り、道路付近には人が住んでいる気配はほとんど感じられないのだが、そんな道路上にもときどきバス停の標柱が立っている。そして、たまにだが、乗る人も降りる人もいる。この人たちは、広い農場で生計をたてているのだろうか。

 バスが道路上で急に停止した。何なのかと外を見ると、道路をトナカイの群れが横断している。この時は初めての光景なので感激したが、北欧で長距離バスに乗っていると、こんなことは珍しくないのだった。他の乗客も、特に注目はしていない。

 およそ2時間毎くらいの割合で、バスはバスターミナルで30分以上停車する。休憩時間というわけだが、バスターミナルの売店は土曜日ということで閉まっており、何も買えない。
 私は昨日の夜から何も食べていないので、空腹のはずなのだが、今のところ空腹はあまり感じない。初めて訪れるフィンランドの地に、緊張しているからなのかもしれない。とはいえ、このままでは体に悪い。

 イヴァロ(Ivaro)には15:44に到着、ここで45分ほどの停車時間があった。バスターミナルでは何も売ってなかったが、道路を渡ったところにスーパーマーケットがあったので、そこでバゲットサンドとジュースを購入し、遅い昼食とした。

 イヴァロからは、湖(イナリ湖)が見えてきた。平野・森林の車窓が続いていたが、久しぶりに水のある風景となった。


 カーマネン(Kaamanen)を出るとバスは左折し、舗装がはがれた道路に入った。今までのハイウエー並みの道路の快適走行からは一転、スピードが落ちた。このあたりの道路沿いには、人が住んでいる様子はない。バス停も見られない。とはいえ、舗装がはがれた区間は長くは続かず、30分ほどで舗装道に戻った。

 乗客は各所で少しずつ降りていき、車内は徐々に空いてきた。18 時40分発のカリガスニエミ(Karigasniemi)からは、私を含めて乗客は2人だけになっていた。

 カリガスニエミを出るとバスはほどなく、国境を越えてノルウェーに入る。ノルウェーに入ると車窓風景が少し変わり、森林と大河の車窓になった。

 17:55、カラショクに到着した。カラショクは小さな町である。このバスは、冬期はこのカラショクで終点になるという。

 18時55分のラクセルブ(Lakselv)で乗客が1人下車し、ついに乗客は私1人になってしまった。遅い時刻に乗客が自分一人だけ、という状況は、一人旅の好きな身にも心細いものである。それが外国ともなるとなおさらだ。が、なぜか私にはこういう経験が多い。
 ラクセルブ発は18:55。ここからは、ポルサンゲン湾の湾岸の風景になった。しかし、天気はあまりよくないため、外はもう薄暗くなっていた。

 オルダーフィヨルド(Olderfjord)で、バスは19:45〜20:15まで、最後の長時間停車となった。しかし、ここからは雨になってしまい、車窓風景どころではなくなってしまった。オルダーフィヨルドからも、バスは海沿いの美しい場所を走る。すでに20時台だが、ここは北極圏なので外はまだまだ明るく、車窓を楽しめる時間帯のはずである。そこにこの雨である。旅行運が悪いな、と思った。

 21:35、バスは目的地のホニングスヴォーグに到着した。この頃には雨は小降りになっていた。遅い時刻であるが、高緯度のホニングスヴォーグはまだ真っ暗にはなっておらず、町の様子は分かる。
 改めて思ったことだが、このバスの運転士は1人、それも、ロバニエミで私が乗る前からここまで、交代せずにずっと運転している。始発のオウルから終点のノールカップまでの15時間をずっと1人で乗務しているのだろうか?だとしたらすごい激務である。私はそんなことに驚きつつ、バスを降りたのである。


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