Chapter 5: メトロノース鉄道ニューヘブンライン-2


 朝7時、私はニューヨークに向かうべく、スタンフォード駅にやってきた。今はラッシュダイヤの直前、すでに発車案内のモニターは、『Express Grand Central』の表示がずらりと並んでいる。私はExpressに乗り込み、座席で日本から持参したOuDiaのダイヤグラムを広げた。

※このとき持参したダイヤは、OuDia のホームページデータファイル のページで公開しています。

 このメトロノース鉄道のラッシュダイヤは、日本では見られないものである。データイムは1時間にExpress1本・Local2本の運転だが、ラッシュアワーにはExpressが1時間に17本も走る。Expressの停車駅は列車ごとに異なっており、ほとんど全ての駅からニューヨーク行きの速達列車が利用できる。反面、各駅停車はラッシュアワーにはほとんど走らない。ニューヨーク直行の旅客にターゲットを絞りきっており、区間利用は犠牲にされたダイヤである。しかし、これはアメリカでは珍しいダイヤではない。シカゴやサンフランシスコの中距離通勤鉄道も、これと似たようなダイヤである。

 ニューヘブンラインは内側急行線タイプの方向別複々線である。私の乗った列車は、途中のGreenwich までは各停、そこからはグランドセントラルまでノンストップという区間急行タイプなので、外側の緩行線を走る。内側線を、自作のダイヤグラムの通りに速達型の急行列車、それに時折Amtrakの長距離列車が追い抜いていく。Amtrakとメトロノースのニューヘブンラインは線路を共用しているのである。
 そんな様子を見るのは本当に楽しい。OuDiaを作ってよかったと思う瞬間だが、それと共に、定時運行が保たれている鉄道でなければ、この楽しみはありえない。ニューヨークに来てよかったと改めて思った。

ニューヘブンライン電車
パンタグラフとコレクターシューの両方を持つ

ニューヘブンラインは、Pelham までは架空線式だが、Mt.Vernon Eastからはグランドセントラルまで第三軌条式になる。架空線式と第三軌条式の切り替え区間である Pelham〜Mt.Vernon East 間では走行中にパンタグラフを折り畳んでいるはずだが、車内にいるとそんなことには気づかない。

 Woodlawn では、ハーレムラインと合流した。ハーレムラインと合流後も線路は複々線のままである。と、思っていたら、左手の下り急行線を上り列車が走り抜けていくではないか。
 メトロノース鉄道のニューヨーク付近では、朝のピークタイムは4線中3線をニューヨークゆき、1線をニューヨーク発に使っているのである。このため、複々線という表現はここでは正しくない。4本の線路をケースバイケースで柔軟に上り・下りに配分しているのである。こんな運転をすれば、上り列車がどんどんターミナル駅にたまってしまうが、グランドセントラル駅は2層構造で合計67本(上層に41本・下層に26本)の発着線があり、大量の列車を収容できるため、このような運転が可能なのである。

参考: http://en.wikipedia.org/wiki/Grand_Central_Station

 と、日本の通勤輸送では見られない運行形態に感嘆を覚えているうちに、電車はニューヨークの地下を走ってグランドセントラルに到着した。私は、大きなカルチャーショックを胸に、通勤客に混じって地下鉄への乗り換え通路を急いだのである。


補足


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