Chapter 7: リバーライン


 12時58分、私の乗ったリバーライン(River Line)のカムデン・エンターテイメントセンター(Camden Entertainment Center)ゆき列車はトレントンを出発した。
 リバーライン は、トレントンの駅前から発着するライトレール型の列車であり、トレントン〜カムデンの55kmを結んでいる。ライトレール型車両であるが、電車ではなくディーゼルカーである。運賃は均一で$1.35 。これで55kmも離れたカムデンまで行けるのだから、とても運賃の安い列車である。

 リバーラインの沿線風景は結構多彩だ。線名の通りの川沿いを走る区間・人家のない草原を走る区間があるかと思えば、路面電車のように道路の間を走る区間もある。線路は大部分が専用軌道で、列車はライトレール型車両には不似合いなほどの高速で走ることが多い。

 列車は時々、留置された貨物列車とすれ違う。このリバーラインは、データイムはライトレール・夜間は貨物鉄道として使われているのである。

 乗客は短距離利用者が結構多い。リバーラインでは自転車の車内持込が許可されているため、駅まで自転車で来て乗り込んでくる人も多い。

 やがて列車はカムデンの市街地に入り、ウォーターフロントの再開発地域に入った。このあたりではようやくリバーラインは路面電車のムードになった。終点のエンターテイメントセンターは、そんなウォーターフロント地区にある。デラウェア川の対岸には、ペンシルバニア州最大の都市であるフィラデルフィアのビル群がそびえている。

 そんな川辺のベンチで一休みした後、私はリバーライン で折り返し、Walter Rand Transportation Center 駅で下車した。ここは、ウォーターフロント地区とは異なり、カムデンの旧市街といった感じの場所である。ここからは、PATCO LINEという電車に乗り換えるつもりである。

 ところが、私は PATCO LINEの駅の入口を見落としてしまい、カムデンの市街地をウロウロしてしまう。市街地の道端には多くの物売りが品物を広げており、また、物売り以外にもたくさんの人がたむろしている。みんな黒人ばかりで、東洋人は皆無、私は完全に浮いた存在である。

 一旦 リバーライン の駅に戻ってゆっくり歩きなおすことにより、目指す PATCO LINE の駅にたどりつくことはできたが、この乗り換えはすごい緊張を覚えるものだった。それは多分、「カムデンは全米でもワースト5に入るほど治安の悪い都市」という情報をWeb上で見ていたからかもしれない。


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