8月13日19時少し前、私はロンドンの St.Pancras International駅の地下ホームにやってきた。
St.Pancras International 駅は、ロンドンの新しい玄関口とも言える駅である。パリやブリュッセルとロンドンを結ぶ国際列車 Eurostar が発着する。駅は Eurostar の乗り入れに伴って改装されたため、National Rail の駅の中では珍しく、近代的な感じのする駅である。地下ホームもまだ新しく、通路も広く、エスカレータの台数も多くて利用しやすい。ロンドン地下鉄や、先ほどの Moorgate 駅のような古ぼけた感じはしない。
St.Pancras Internationalは、2階に折り返し方式の13線・地下に途中駅型の2線の発着線がある。2階の発着線からはEurostarをはじめとする長距離列車が発車するが、地下の2線は、NATIONAL RAIL のうちの Thmaeslink と呼ばれる中距離電車が発着する。
Thmaeslink は、National Railでは唯一、ロンドンの都心を地下線で通り過ぎる路線である。ここを走る電車はロンドンを南北に縦断し、主にロンドンの北の Bedfordから南海岸のBrighton までのの160kmを直通運転している。
路線図: http://www.thameslinkrailway.com/download/6579.3/thameslink-route-map/
19時01分、私の乗ったBedfordゆき快速電車は St.Pancras International 駅を発車した。電車は8両編成の近郊型電車だが、車内の座席は一部3列-2列の座席になっており、座席数の多い配置になっている。しかし、車内は帰宅客で満員で、私は座れなかった。
快速電車は、ロンドンの ST PANCRAS INTERNATIONAL 駅から St.Albans City までの32kmをノンストップ運転、以遠はBedford までの48kmを各駅停車で走る。ノンストップ運転を行う St.Pancras International 〜 St.Albans City までの所要時間は21分。表定速度は91km/hと速い。
St.Pancras International 駅を出た快速電車は地上に出て、St.Pancras International の2階ホームからの線路と並ぶ。ここから北は、線路別複々線になった。線路別複々線のうちの急行線がSt.Pancras International の2階ホームに、緩行線が地下ホームにつながっているのである。
私の乗った快速電車は、緩行線をしばらく走ったあと、急行線に転線する。急行線に移ったあとは速度を上げて、緩行線を走る各駅停車電車を追い抜いた。
ThameslinkのLondon以北の区間は、平日データイムは快速・各駅停車がそれぞれ15分毎に走り、快速がSt.Pancras International〜St.Albans City間で普通を1本追い抜くのが基本である。しかし、日本の私鉄のように、各駅停車が待避線のある駅で通過待ちをするのではない。快速電車がこの区間だけ緩行線から急行線に転線して各駅停車を追い抜いて、St.Albans Cityの手前で再び緩行線に転線する。
複々線の緩行線と急行線を往ったり来たりして各駅停車を追い抜くという運転方式は、日本の京阪電車などでも行われているが、それは方向別複々線での話である。線路別複々線の緩行線と急行線を往き来する列車が、日常的に頻繁に走っている路線は、ここ以外では見たことがない。
この区間に初めて乗ったのは、2004年のことである。何の予備知識も持たずにこの運転方法を見たときの驚きは大きかった。それ以来、この路線にはいずれじっくり乗り直したいと思っていたのだが、それがようやく実現した。
19時35分、私の乗った快速電車は、Luton に到着した。私は久々のThameslink に満足しつつ、Lutonで電車を降り、予約していたホテルに向かったのである。今回の旅行では、Thameslink に乗ることを考慮して、ロンドンでの滞在先を、ここLutonにしたのだった(ホテル代が高くて騒々しいロンドンを避けたということもあるが)。あすからは毎日、LutonからLondonへ電車で通うことになるのである。
Luton
Luton は、これといった観光資源のないロンドンの近郊都市です。当然、旅行ガイドブックで紹介されることはありません。ただし、Lutonには、国内航空路線が発着するLuton空港があります。このため、地名自体は結構よく知られているのではないかと思います。日本で言えば、伊丹市のようなものでしょう。
ダウンタウンは結構活気がありますが、特徴はチキンのファストフードが多いこと。「Piri-Piri Chicken」の看板が多く見られます。また、「Halal」(ハラール)の看板も多く見られます。「ハラール」は、「イスラム法で合法であること」、つまり、イスラム教に反するメニューが皆無であるということです。イスラム教の方が多い街なのでしょう。
乗り物好きとして特筆したいのは、ガイドウエイバスが走っているということです。日本では、ガイドウエイバスが走っているのは名古屋の一路線だけなので、日本人にとってはガイドウエイバスは珍しい乗り物です。あらかじめLutonにガイドウエイバスがあると分かっていたら、乗る予定を旅程に組み込んでいたと思います。しかし、残念ながら今回は、Lutonには寝に帰るだけのような旅程にしてしまったため、ガイドウエイバスに乗ることはできませんでした。