CHAPTER 6−
チワワ太平洋鉄道の車窓−2

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 私が乗っているのは「1等急行」である。チワワ太平洋鉄道は、両方向の起点を6時に「1等急行」、7時に「2等列車」が発車するダイヤである。1等列車とはディビサデロで行き違いになった。ディビサデロを出て32分後の14時9分、列車は山の中の信号所に停車した。これは明らかに「2等列車」との行き違いだろう。

 書き忘れていたことだが、私の乗っている列車はかなり空いている。乗車率は10%に達していない。ちなみに編成はDL×2・食堂車・バーラウンジ車・客車×2というもので、編成中の客車の比率が非常に低い。これで乗車率も低いのだから、何と不経済な運行かと思ってしまう。それに、旅行者としては、あまりに混んでいるのも困るが、あまりに空いているのも盛り上がらないものである。


 ところが、すれちがったロスモチスゆき「2等列車」はほぼ満席の盛況で活気を感じさせる。私も気持ちとしては「2等列車」に乗ってみたかったのだが、2等列車は終点到着時刻が遅いためちょっと恐くて、「1等急行」にしたのである。

 列車はさらに坂を上る。このあと2時間ほど山岳鉄道の車窓が連続し、列車はクリール駅に到着。ここは観光客向けの宿泊施設が充実した町なので、何人かの人が降り、車内はさらにさびしくなった。

Creel

 クリールの手前で最高地点を越えたようであり、クリールからは平坦な高原の車窓になった。広い荒地、その向こうに乾いた山、ときどき牛や羊の群れ、という大陸らしい車窓がひたすら続く。

 その単調さが、私に心配事を思い起こさせる。それは、「今夜の宿をどうするか?」ということである。トーマスクックの時刻表によると、この列車が終点のチワワに着くのは19:50。宿さがしをはじめるにはやや厳しい時間帯である。ところが、列車はすでに1時間10分ほども遅れている。このままいけば、終点到着は9時すぎになってしまう。

そうこうしているうちに、時刻は8時を回り、とうとう車窓は暗闇になってしまった。宿のあてのないまま迎える中南米の闇夜に、私は大きな不安を覚えるのであった。

Cualhtemoc

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