2008年8月11日、私はTimes Square駅から地下鉄のホームに降り立った。初めてのニューヨークの地下鉄に乗るときが、いよいよやってきたのである。
『(1)(2)(3)Downtown』と書かれたホームに降りると、狭くて古びたホームは通勤客でいっぱいである。ホームは空調がきいておらず、結構暑い。そんなホームの両側に、割と小ぶりな車両を10両ほど連ねた電車がひっきりなしに入ってくる。ただ、運転間隔はわりとムラがある。時刻表はホームのどこにもない。
いずれの電車も通勤客で満員である。但し、日本の地下鉄のような押し合いへしあいにはなっていない。
この路線は、都心部では複々線になっており、内側を急行(Express)・外側を各停(Local)が走る。やはりこれはうらやましいものである。時間短縮効果はそう大げさなものではないが、それでも目的地までに通過駅が5駅あると、急行のありがたみは感じられる。
と、いろいろなことに感激しているうちに、電車は最初の目的地であるサウスフェリー(
South Ferry ) 駅 に到着した。
思えば、私が学生の頃に買った『はじめての海外旅行』という類のハウツー本では、ニューヨーク地下鉄は路線は複雑、電車は落書きだらけで汚い、治安は悪く危険、昼間でも女性の一人乗りは厳禁、とまで書かれていた。しかし、ニューヨーク地下鉄にはこの後も毎日乗っていたが、私の見たニューヨーク地下鉄は多くの人に利用されており、昼間のマンハッタンの都心部でなら安心して乗れる鉄道であると言える。何より、こんな興味深い鉄道が安心して乗れないほど危険であるとしたら、鉄道趣味人としてこんなに悲しいことはない。しかし、決してそうではないということが分かっただけでも、ニューヨークに来てよかったと思えるのである。
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